「だって普通科なのにずっと学年トップで、1年のときから中津がいて」
中津くんと書いて舎弟と読む……。実際、中津くんは廊下ですれ違うたびに敬語で挨拶をしてくる。お陰で隣の荒神くんが「え、なに?」なんて顔をしている始末だ。もちろんその場に居合わせる他の1年生も同じく。結果、なぜか「中津は5組の桜井、雲雀そして三国の舎弟らしい」なんて噂が流れている。
「そんでもって3年のリーダーの愛人で、って言われるんだぜ。もしかしたら俺らっていう番犬がついてるみたいに言われるかもしれないし」
「……確かに……!」
実際、既にクラスメイト達から向けられる目には恐怖と畏敬と疑念が含まれている気がしてならない。
いかんせん、群青の先輩達は平然と教室に入ってくるし、だからクラスメイト達の目の前で先輩達と喋る様子を目撃される。しかも廊下に屯ろしていて、当然すれ違えば挨拶もする。それ自体は部活の先輩後輩と大差ないと思っていたら、陽菜から「ぶっちゃけ英凜が隣にいなかったら通れないわ。群青のゴツめの先輩らが屯ってんの怖くね?」と言われて、自分の感覚が麻痺していることに愕然とした。それ以外にも、どこからか「三国ちゃんやっほー!」なんて声が聞こえたかと思ったら隣の校舎の窓から手を振られていたりする。誰かがマサイ族並みの視力を持っているに違いない。
「つか英凜、既に多田とかに言われてんじゃん、英凜の着替え覗いたら学校帰りに群青の襲撃に遭うって」
「悪質な冗談だよね」
「なんたってマジでやられそうだからな」
……本当に悪質だ。やめてほしい。
「てか話戻っていい?」
もう何の話だったか忘れてしまった。首を捻っていたけれど「結局ツクミン先輩は信用できるけど、能勢さんは結構黒に近いグレーだよなって話だよな?」思い出した、そういえばそんな話をしていたんだった。
「とりあえず能勢さんに注意してればよくね? 能勢さん以外にも新庄とつるんでるヤツがいるとしても、あの能勢さん差し置いて別のヤツが頭になってるなんて考えらんないし。だったら英凜の情報が能勢さんに渡るかどうか、そこのラインに注意してればどうにかはなるんじゃねーの?」
「……まあ、そう、だね……」
「あとツクミン先輩は白だからあんま警戒しないでオッケー。問題は永人さんだけど……」
「蛍さんに三国の体が弱いって情報を使うのはありかもしれねーな。群青のトップ2が同時に深緋と通じてるってのは考えにくいし、なによりあの2人を同時に警戒するってのは疲れる」
「情報を使うって?」
「三国が真夏にけろっとした顔して普通に生活してりゃ、能勢さんが体は大丈夫かとか聞く可能性はあるだあろ。それを群青の先輩らの前でやられたら、もう誰が知ってて知らないのか分かんなくなる。だったら“体が弱い”がキーワードとして機能するうちにカマかけに使えばいい」
……その説もある、か……。なんなら、こうしているうちにも能勢さんが雑談の一環で先輩達に話す可能性はあるし、能勢さん以外に新庄と繋がっている人は「能勢から聞いた」と言い訳ができるようになってしまう。使えるうちに使っておいたほうがいい。
「……そうだね。それこそ海に行くタイミングとかで2人にさりげなく言ってもらうことになるかも……」
「てか群青の先輩らと平気で遊んでる三国見てたら体弱いなんて思わねーよな。舜の方便だったんじゃないかって考え始めてもいい気がするけど」
中津くんと書いて舎弟と読む……。実際、中津くんは廊下ですれ違うたびに敬語で挨拶をしてくる。お陰で隣の荒神くんが「え、なに?」なんて顔をしている始末だ。もちろんその場に居合わせる他の1年生も同じく。結果、なぜか「中津は5組の桜井、雲雀そして三国の舎弟らしい」なんて噂が流れている。
「そんでもって3年のリーダーの愛人で、って言われるんだぜ。もしかしたら俺らっていう番犬がついてるみたいに言われるかもしれないし」
「……確かに……!」
実際、既にクラスメイト達から向けられる目には恐怖と畏敬と疑念が含まれている気がしてならない。
いかんせん、群青の先輩達は平然と教室に入ってくるし、だからクラスメイト達の目の前で先輩達と喋る様子を目撃される。しかも廊下に屯ろしていて、当然すれ違えば挨拶もする。それ自体は部活の先輩後輩と大差ないと思っていたら、陽菜から「ぶっちゃけ英凜が隣にいなかったら通れないわ。群青のゴツめの先輩らが屯ってんの怖くね?」と言われて、自分の感覚が麻痺していることに愕然とした。それ以外にも、どこからか「三国ちゃんやっほー!」なんて声が聞こえたかと思ったら隣の校舎の窓から手を振られていたりする。誰かがマサイ族並みの視力を持っているに違いない。
「つか英凜、既に多田とかに言われてんじゃん、英凜の着替え覗いたら学校帰りに群青の襲撃に遭うって」
「悪質な冗談だよね」
「なんたってマジでやられそうだからな」
……本当に悪質だ。やめてほしい。
「てか話戻っていい?」
もう何の話だったか忘れてしまった。首を捻っていたけれど「結局ツクミン先輩は信用できるけど、能勢さんは結構黒に近いグレーだよなって話だよな?」思い出した、そういえばそんな話をしていたんだった。
「とりあえず能勢さんに注意してればよくね? 能勢さん以外にも新庄とつるんでるヤツがいるとしても、あの能勢さん差し置いて別のヤツが頭になってるなんて考えらんないし。だったら英凜の情報が能勢さんに渡るかどうか、そこのラインに注意してればどうにかはなるんじゃねーの?」
「……まあ、そう、だね……」
「あとツクミン先輩は白だからあんま警戒しないでオッケー。問題は永人さんだけど……」
「蛍さんに三国の体が弱いって情報を使うのはありかもしれねーな。群青のトップ2が同時に深緋と通じてるってのは考えにくいし、なによりあの2人を同時に警戒するってのは疲れる」
「情報を使うって?」
「三国が真夏にけろっとした顔して普通に生活してりゃ、能勢さんが体は大丈夫かとか聞く可能性はあるだあろ。それを群青の先輩らの前でやられたら、もう誰が知ってて知らないのか分かんなくなる。だったら“体が弱い”がキーワードとして機能するうちにカマかけに使えばいい」
……その説もある、か……。なんなら、こうしているうちにも能勢さんが雑談の一環で先輩達に話す可能性はあるし、能勢さん以外に新庄と繋がっている人は「能勢から聞いた」と言い訳ができるようになってしまう。使えるうちに使っておいたほうがいい。
「……そうだね。それこそ海に行くタイミングとかで2人にさりげなく言ってもらうことになるかも……」
「てか群青の先輩らと平気で遊んでる三国見てたら体弱いなんて思わねーよな。舜の方便だったんじゃないかって考え始めてもいい気がするけど」



