「『体が弱い』って情報を持ってるんなら、そこを結びつけちゃうんじゃないかなと思って。それでもって、九十三先輩って……あんな感じじゃん?」
はっきり口には出さなかったけれど、2人は「ああ、おはようの代わりにパンツの話ね」「一昨日あの状況でもパンツの話してるからな。ギャグだろうけど」とすぐに頷いた。もはや九十三先輩の代名詞がパンツになりつつあると言っても過言ではない。
「……だから、『体が弱い』っていうことを軽率に口に出してしまうほうが自然なんじゃないかと思って。特に、あの能勢さんさえ口を滑らせるくらいだし……」
「そうだなあ、ツクミン先輩からそういう話は聞いたことないしなあ……」
「パンツの話しかしねーのか、マジで」
さすがにそれは冗談交じりの相槌だったとは思うのだけれど、桜井くんは意外にも黙り込んだ。よく考えたら何の話をしているんだ、といわんばかりに首も傾げる。
「……そういえば、ツクミン先輩って英凜がいないところだとパンツの話してない気がする。野球かサッカーか……あとは安くて美味い飯屋?」
「逆だろ。なんで三国の前でだけパンツの話してんだよ」
……また九十三先輩の思わぬ一面を聞いてしまった。もしかしてパンツのくだりは私を油断させるためにあえて口にしているだけで本当は欠片も興味がないとか……? いやしかし一体なんのために……?
「……もう先輩達のことがわけわかんなくなってきた」
「意外と九十三先輩って曲者だよな。他人との距離の見極め上手いし」
「なんかそういう人ばっかりじゃない? 群青って……」
「普通にしてるとそうは見えないんだけどなあ。てか幹部にそういう人多すぎ。知ってる? 今の群青、群青史上最強なんだってさ」
昨日は最|寂なんて聞こえたような──というのはさておき、その話には特に違和感はない。先輩達の序列は聞いたことがないけれど、少なくともトップに蛍さんがいて、能勢さんという頭脳派がいて、九十三先輩という圧倒的武闘派がいる。上から3人数えるとこんなにも面々が濃い。
「……桜井くん達が2つ学年ずれてたらどうなってたんだろう」
「えー、そんなの永人さんと親友になってるよ」
そういう話ではない、のだけれど、確かにキャラクターの分類としては桜井くんと九十三先輩が近い。現に学校の外でも仲が良いみたいだし。そして九十三先輩と蛍さんは他の先輩達より仲良く見えるし、桜井くんのその反実仮想自体は間違ってなさそうだ。
「そうじゃなくて、もっと最強だったのかなって」
「あー、うーん、どうなんだろうね。意外と群青に入んないで|二匹狼してたかも」
……それもそうか。2人は2人で充分強いわけだし、私のことがなければ群青には入らなかっただろうし……。群青にとって2人がいるメリットはあっても、きっと逆はない。
「……きっと2年経ったら、桜井くん達も不気……、曲者の先輩って言われてるんだろうね」
「いま不気味って言おうとしたよな」
「言ってない」
「言おうとしたよなつってんだよ」
「侑生はともかくとして俺はなんで?」
「桜井くん、ボケボケしてるのに急に頭のキレを見せてくるから、下手したら雲雀くんより不気味だと思う」
「これ俺馬鹿にされてる?」
「つか不気味つったよな」
「大体、英凜のほうが絶対不気味だぜ」
「えっ」
不気味だと……。自分が他人に向けた形容が返ってきた途端ショックなものに思えた。桜井くんは「え、そんなヤなこと言った?」と眉を顰める。
はっきり口には出さなかったけれど、2人は「ああ、おはようの代わりにパンツの話ね」「一昨日あの状況でもパンツの話してるからな。ギャグだろうけど」とすぐに頷いた。もはや九十三先輩の代名詞がパンツになりつつあると言っても過言ではない。
「……だから、『体が弱い』っていうことを軽率に口に出してしまうほうが自然なんじゃないかと思って。特に、あの能勢さんさえ口を滑らせるくらいだし……」
「そうだなあ、ツクミン先輩からそういう話は聞いたことないしなあ……」
「パンツの話しかしねーのか、マジで」
さすがにそれは冗談交じりの相槌だったとは思うのだけれど、桜井くんは意外にも黙り込んだ。よく考えたら何の話をしているんだ、といわんばかりに首も傾げる。
「……そういえば、ツクミン先輩って英凜がいないところだとパンツの話してない気がする。野球かサッカーか……あとは安くて美味い飯屋?」
「逆だろ。なんで三国の前でだけパンツの話してんだよ」
……また九十三先輩の思わぬ一面を聞いてしまった。もしかしてパンツのくだりは私を油断させるためにあえて口にしているだけで本当は欠片も興味がないとか……? いやしかし一体なんのために……?
「……もう先輩達のことがわけわかんなくなってきた」
「意外と九十三先輩って曲者だよな。他人との距離の見極め上手いし」
「なんかそういう人ばっかりじゃない? 群青って……」
「普通にしてるとそうは見えないんだけどなあ。てか幹部にそういう人多すぎ。知ってる? 今の群青、群青史上最強なんだってさ」
昨日は最|寂なんて聞こえたような──というのはさておき、その話には特に違和感はない。先輩達の序列は聞いたことがないけれど、少なくともトップに蛍さんがいて、能勢さんという頭脳派がいて、九十三先輩という圧倒的武闘派がいる。上から3人数えるとこんなにも面々が濃い。
「……桜井くん達が2つ学年ずれてたらどうなってたんだろう」
「えー、そんなの永人さんと親友になってるよ」
そういう話ではない、のだけれど、確かにキャラクターの分類としては桜井くんと九十三先輩が近い。現に学校の外でも仲が良いみたいだし。そして九十三先輩と蛍さんは他の先輩達より仲良く見えるし、桜井くんのその反実仮想自体は間違ってなさそうだ。
「そうじゃなくて、もっと最強だったのかなって」
「あー、うーん、どうなんだろうね。意外と群青に入んないで|二匹狼してたかも」
……それもそうか。2人は2人で充分強いわけだし、私のことがなければ群青には入らなかっただろうし……。群青にとって2人がいるメリットはあっても、きっと逆はない。
「……きっと2年経ったら、桜井くん達も不気……、曲者の先輩って言われてるんだろうね」
「いま不気味って言おうとしたよな」
「言ってない」
「言おうとしたよなつってんだよ」
「侑生はともかくとして俺はなんで?」
「桜井くん、ボケボケしてるのに急に頭のキレを見せてくるから、下手したら雲雀くんより不気味だと思う」
「これ俺馬鹿にされてる?」
「つか不気味つったよな」
「大体、英凜のほうが絶対不気味だぜ」
「えっ」
不気味だと……。自分が他人に向けた形容が返ってきた途端ショックなものに思えた。桜井くんは「え、そんなヤなこと言った?」と眉を顰める。



