ああ、去年からの名簿なんだな、とすぐに分かった。能勢さんの名前も「1年」の中に載っていたし、それこそ留年したという服部先輩の名前は「2年」に載っていたから。だから「3年」の中には、蛍さん達の1個上の群青のメンバーの名前が書かれていた。何の気なしに、「3年」と書かれた名簿にも目は通した。
「3年」の名簿に山田と豊津はあった。あったけど、2人の名前の文字列は「山田明紀」「豊津良介」。
「群青の今の3年の1個上、卒業1年目の先輩達の名前は覚えてるけど、その人達とは名前が違ってた。さすがに名前を間違えるってことは、群青関係の人じゃないのは間違いない。どこかのチームのOBかどうかまではわからないけど、深緋の人なのかも」
「あ、群青のOBだってわざわざ言うってことは敵チーム……?」
「っていうのもあるし、群青の1個上の先輩達に山田と豊津がいるのは事実。その群青の1個上の先輩達の苗字を使ったのに、名前は間違ってた。ってことは、山田と豊津はいわゆる抗争相手として把握してたのを咄嗟に答えただけ。苗字で呼び合われてる人達なら外部の人が認識してておかしくないし」
陽菜の手を離して携帯電話を取り出し、迷わず雲雀くんに電話をかけた。コール音を聞きながらも足を進めれば、じりじりと足の指の間が熱を持ち始めるのを感じる。鼻緒と皮膚の摩擦で皮が捲れてしまったのだろう。早歩きでも下駄はかなり厳しい。
「どこまで考えてたのかは分からないけど、わざわざ当時の姫の名前を出してたのは、群青のOBだってことに信憑性を持たせるため。ニックネームまで話すなんて、妙に具体的だなとは思ったけど、でもだから信じちゃう。蛍さん達が深緋の動きがきな臭いって話してたから、そういう周到さを見せるのは深緋なんじゃないかなって……」
プツッと音がして「(どこ?)」と雲雀くんの声が聞こえた。慌ててあたりを見回して「紅鳶神社の階段降りるところ!」数メートル先を口にした。
「(なんでそんなとこいんの?)」
「深緋っぽい人がいたから逃げた。お願い、階段下で──えっ」
ブツッと電話が切れた。驚いて画面を見るけど「通話終了」としか出ていない。まさか雲雀くんにも何かあった……?
「どした英凜」
「……雲雀くんとの電話が切れた」
「……まさか」
陽菜の顔が青ざめる。きっとその頭の中にあるイヤな予感は正しい。でも振り返ったところで、桜井くんと雲雀くんの居場所が分かりそうなほどの乱闘騒ぎは見えない。お祭りのこの喧噪じゃ、聞こえることもないだろう。
「……英凜、これ、もしかしてヤバイ……?」
「……いや……、でもさっきの2人組は撒いたし、どうせこの中じゃ浴衣姿の私達なんて見つけられない……」
──あれ、なんで、さっきの2人は陽菜に声をかけたんだ? ふとその疑問が湧いた。
深緋の人だとしたら、新庄が写真を持っているから、私の顔は知っているに違いない。でも陽菜の顔写真が出回っているなんて聞いたことがないし、そもそも陽菜は桜井くんと雲雀くんと仲が良いといったって、私ほど2人と一緒にいることはない。現に陽菜が誰かに襲われたこともない。それなのに、さっきの2人は、わざわざ陽菜相手に群青のOBだなんて名乗って、陽菜と私を騙そうとした。
なぜ、さっきの2人組は、陽菜を狙い撃ちできたのだろう。まるで、陽菜がいる近くには私がいると分かっていて、そしてその陽菜と私は紅鳶神社の休憩所に入ったのだと分かっていたかのように。
「3年」の名簿に山田と豊津はあった。あったけど、2人の名前の文字列は「山田明紀」「豊津良介」。
「群青の今の3年の1個上、卒業1年目の先輩達の名前は覚えてるけど、その人達とは名前が違ってた。さすがに名前を間違えるってことは、群青関係の人じゃないのは間違いない。どこかのチームのOBかどうかまではわからないけど、深緋の人なのかも」
「あ、群青のOBだってわざわざ言うってことは敵チーム……?」
「っていうのもあるし、群青の1個上の先輩達に山田と豊津がいるのは事実。その群青の1個上の先輩達の苗字を使ったのに、名前は間違ってた。ってことは、山田と豊津はいわゆる抗争相手として把握してたのを咄嗟に答えただけ。苗字で呼び合われてる人達なら外部の人が認識してておかしくないし」
陽菜の手を離して携帯電話を取り出し、迷わず雲雀くんに電話をかけた。コール音を聞きながらも足を進めれば、じりじりと足の指の間が熱を持ち始めるのを感じる。鼻緒と皮膚の摩擦で皮が捲れてしまったのだろう。早歩きでも下駄はかなり厳しい。
「どこまで考えてたのかは分からないけど、わざわざ当時の姫の名前を出してたのは、群青のOBだってことに信憑性を持たせるため。ニックネームまで話すなんて、妙に具体的だなとは思ったけど、でもだから信じちゃう。蛍さん達が深緋の動きがきな臭いって話してたから、そういう周到さを見せるのは深緋なんじゃないかなって……」
プツッと音がして「(どこ?)」と雲雀くんの声が聞こえた。慌ててあたりを見回して「紅鳶神社の階段降りるところ!」数メートル先を口にした。
「(なんでそんなとこいんの?)」
「深緋っぽい人がいたから逃げた。お願い、階段下で──えっ」
ブツッと電話が切れた。驚いて画面を見るけど「通話終了」としか出ていない。まさか雲雀くんにも何かあった……?
「どした英凜」
「……雲雀くんとの電話が切れた」
「……まさか」
陽菜の顔が青ざめる。きっとその頭の中にあるイヤな予感は正しい。でも振り返ったところで、桜井くんと雲雀くんの居場所が分かりそうなほどの乱闘騒ぎは見えない。お祭りのこの喧噪じゃ、聞こえることもないだろう。
「……英凜、これ、もしかしてヤバイ……?」
「……いや……、でもさっきの2人組は撒いたし、どうせこの中じゃ浴衣姿の私達なんて見つけられない……」
──あれ、なんで、さっきの2人は陽菜に声をかけたんだ? ふとその疑問が湧いた。
深緋の人だとしたら、新庄が写真を持っているから、私の顔は知っているに違いない。でも陽菜の顔写真が出回っているなんて聞いたことがないし、そもそも陽菜は桜井くんと雲雀くんと仲が良いといったって、私ほど2人と一緒にいることはない。現に陽菜が誰かに襲われたこともない。それなのに、さっきの2人は、わざわざ陽菜相手に群青のOBだなんて名乗って、陽菜と私を騙そうとした。
なぜ、さっきの2人組は、陽菜を狙い撃ちできたのだろう。まるで、陽菜がいる近くには私がいると分かっていて、そしてその陽菜と私は紅鳶神社の休憩所に入ったのだと分かっていたかのように。



