ぼくらは群青を探している

「だーってアイツ、第一声で『てか三国ってあの桜井と付き合ってんだ』とか言うんだぜ。いやお前、ゼッテー思ってねーだろ。俺のこと牽制(けんせい)してーんだろってなんかその時点でムカついた」
「桜井くん……牽制なんて言葉知ってるんだ……」
「いま俺がちょっとカッコよかった場面だから! そういうこと言って茶化さないで!」

 ガジガジと何かの腹いせのようにポテトを食べ続けながら、桜井くんは「あと中学のときに仲良かった男子は自分と川西とかいう2人だけ、みたいな。なんだそれマウントってんのか、って」
「笹部、そんな話してたの? ま、アイツはそういうとこある、ガキだから」

 陽菜はカステラを口に放り込みながら「てかこれみんなで食べれると思ったから買った。適当に食って」と袋を差し出してくれる。お言葉に甘えて1個貰った。

「てかそっかー、笹部、イケメンになったのに未練タラタラか」
「そうは思わなかったけど……」
「そりゃお前は(にぶ)いから」
「つかフラれた女相手に罵倒してんのヤベェよな」雲雀くんもカステラを口に放り込みながら「フラれたのは自分の良さが伝わらなかったからとか思ってんだ、ああいう陰気なヤツは。くっだらねぇプライドだよな」
「な、なんで2人は初対面の笹部くんにそこまで……」
「俺はほら、牽制されてムカついたから」
「4対2でお前ら囲んでるような図がとりあえずムカついたし、これがあの笹部か、って見た瞬間にダサイ男だなって直感してなんかうざかった」

 ……犬も歩けば桜井くんと雲雀くんに当たる、と。桜井くんのいう牽制はやや自意識過剰感があるけど、雲雀くんのそれは因縁(いんねん)か言いがかりに等しい。でも笹部くんも桜井くんと雲雀くんを「あんな不良」みたいに言ってたから、全体的に見ればどっちもどっち……だろうか。

「ま、笹部もイケメンになったし、英凜にもっかい告ればいけるくらいに思ったんじゃねーの。そしたら隣に桜井がいるから、うわレベル違うってなったとか」
「え、本当? 俺のほうがイケメン?」
「え、それはそうだと思う。桜井、それはマジで自信持っていい、身長ちょっと足んねーけど、桜井と雲雀がうちの学年でツートップ」
「やった……! なんか余計なこと聞こえたけど気にしない……!」

 割り箸を握りしめてガッツポーズをする桜井くんは、確かに顔立ちはしっかりイケメンなんだよな……。言動の幼さのあまり忘れそうになるけど。

「つか、花火とかどこで見る? 俺は牧落達と場所が被るのは御免(ごめん)なんだけど」
「あー、あたしが知ってる穴場、笹部が胡桃ちゃん達に話してるかも」
「ああ、一昨年行ったところ……」
「紅鳶神社の社務所の屋根の上は?」
「三国と池田はのぼれねーだろ」
「え、2人だとそんなとこから見てんの? マジ?」

 とりあえずお箸でしか食べることができない焼きそばを消費した後、屋台が並ぶ道に戻って歩みを進める。紅鳶神社の近くに差し掛かったとき、カゴ巾着の中からバイブレーションが聞こえた。

「どした?」
「……九十三(つくみ)先輩からメール。あーそぼ、だって」
「無視」

 冷ややかな雲雀くんの声が迷いなく切って捨てる。陽菜は「ツクミ……ツクミ……」と反芻(はんすう)してきっと先輩の顔を思い出そうとしている。

「あー、3年の先輩か。九十三先輩の顔も結構好きなんだよなー、てかああいうお兄ちゃん欲しかった」
「え、さっき俺と侑生がイケメンツートップって……」
「1年のな。てか能勢さんが至高だから」