「終わった。もう用はねーから帰りな」
3人は転がるようにして逃げて行き、路地には私達だけが残される。
「……あの、桜井くん……」
「ん?」
「……さっきの仁川……くん? に何したの……」
「いやなんもしてないよ」
おそるおそる見上げた桜井くんはいつもどおりで、本当に“なんもしてない”かのような顔をしている。でもだったら仁川があんなに血の気の引いた顔をしているはずがない。
「2人いるときはまとめて聞かないで1人ずつやるってのが情報吐かせるときのセオリーだぞ、三国」隣の雲雀くんはこなれた口調で「仲間が近くにいると心強くなるだろ。1人を責めるほうが楽なんだよ」
「あとは見えないところで殴られてんじゃないかって思わせるとか。引き離して『アイツは吐いたぞ』って言うのもいいんだけどね」
「……つまり桜井くんは何もしてはいないってこと?」
「まあ大きい音出してみたりはしたけど。顔の真横蹴ったらビビッちゃったんだよね」
……びびっちゃったんだよねじゃないんだよ。顔面の真横を蹴られるなんて怖いに決まってる。私だったら恐怖のあまり気絶している。なんなら今だって自分のことでもないのに手が震えそうだ。
あの2人は特別だ──蛍さんが話していたときのことを思い出した。そのとおりだ。この2人と私じゃ、潜ってきた修羅場が違う。
「偽物掴まされたんだ、転んでタダで起きるわけにはいかねーだろ。貰える情報は貰わねーとな」
「これ明日やってもダメかもなあ。アイツら、俺らに捕まったって言っちゃいそうじゃん」
「やる意味がないとまでは言えねーけど、まあ可能性は低いよな」
「中津の交渉の前日だしなあ。俺ン家で作戦会議でもする? どーする、三国」
振り向いた2人は、こうして見ているとどこにでもいるありふれた高校生なのに、ついさっきまでの所業を見ているとそうは思えなかった。
「……作戦会議にしよう」
「おっけい。あーあ、もう疲れちゃったよ、ねー侑生、カフェラテおごって」
「さっき飲んだ」
「さっき飲んだってなに! 俺が頑張ってる間飲んでたの!?」
「俺だけじゃなくて三国もだから」
「デートじゃん! 俺が働いてる裏でそういうことすんなよ!」
でもそうして話していると、やっぱりありふれた高校生にしか見えず……。
やっぱり群青に片足を突っ込んだのは間違いだったのでは……。そんな後悔に襲われながら、2人の後を追いかけた。
3人は転がるようにして逃げて行き、路地には私達だけが残される。
「……あの、桜井くん……」
「ん?」
「……さっきの仁川……くん? に何したの……」
「いやなんもしてないよ」
おそるおそる見上げた桜井くんはいつもどおりで、本当に“なんもしてない”かのような顔をしている。でもだったら仁川があんなに血の気の引いた顔をしているはずがない。
「2人いるときはまとめて聞かないで1人ずつやるってのが情報吐かせるときのセオリーだぞ、三国」隣の雲雀くんはこなれた口調で「仲間が近くにいると心強くなるだろ。1人を責めるほうが楽なんだよ」
「あとは見えないところで殴られてんじゃないかって思わせるとか。引き離して『アイツは吐いたぞ』って言うのもいいんだけどね」
「……つまり桜井くんは何もしてはいないってこと?」
「まあ大きい音出してみたりはしたけど。顔の真横蹴ったらビビッちゃったんだよね」
……びびっちゃったんだよねじゃないんだよ。顔面の真横を蹴られるなんて怖いに決まってる。私だったら恐怖のあまり気絶している。なんなら今だって自分のことでもないのに手が震えそうだ。
あの2人は特別だ──蛍さんが話していたときのことを思い出した。そのとおりだ。この2人と私じゃ、潜ってきた修羅場が違う。
「偽物掴まされたんだ、転んでタダで起きるわけにはいかねーだろ。貰える情報は貰わねーとな」
「これ明日やってもダメかもなあ。アイツら、俺らに捕まったって言っちゃいそうじゃん」
「やる意味がないとまでは言えねーけど、まあ可能性は低いよな」
「中津の交渉の前日だしなあ。俺ン家で作戦会議でもする? どーする、三国」
振り向いた2人は、こうして見ているとどこにでもいるありふれた高校生なのに、ついさっきまでの所業を見ているとそうは思えなかった。
「……作戦会議にしよう」
「おっけい。あーあ、もう疲れちゃったよ、ねー侑生、カフェラテおごって」
「さっき飲んだ」
「さっき飲んだってなに! 俺が頑張ってる間飲んでたの!?」
「俺だけじゃなくて三国もだから」
「デートじゃん! 俺が働いてる裏でそういうことすんなよ!」
でもそうして話していると、やっぱりありふれた高校生にしか見えず……。
やっぱり群青に片足を突っ込んだのは間違いだったのでは……。そんな後悔に襲われながら、2人の後を追いかけた。



