桜の神子、愛に咲く




 その頃、葵と焔夜の結婚の儀式の準備が神殿で進められていた。紫苑が中心となり、桜ノ国の伝統に則った儀式が計画された。
 葵は神子としてだけでなく、焔夜の花嫁として、国民に愛を誓うことになる。葵は紫苑に相談しながら、儀式の装束を選んだ。


「この桜色の着物…焔夜様が初めて私にくれた着物を思い出すね」


 紫苑は微笑み、言った。


「神と神子の結びつきは、桜ノ国の歴史でも稀だ。汝の愛は、この国を永遠に守るだろう」


 ある日、葵は春霞村に戻り、かつての藤井家の屋敷を訪れた。屋敷は貴代の借金で売却され、今は新しい家族が住んでいた。
 葵は納屋の跡に立ち、過去を振り返った。あの暗闇の中で、桜の古木に祈った日々。焔夜との出会い。あの全てが、今の自分を作ったのだ。


「もう、怖くないよ。過去は私を強くしてくれた」


 葵は納屋の跡に桜の苗木を植え、祈りを捧げた。


「これからも、この村が幸せでありますように」


 村人たちは葵を迎え、感謝の言葉を贈った。かつて葵を無視していた者たちも、彼女の清らかな心に頭を下げた。葵は笑顔で応え、心の傷が少しずつ癒されるのを感じた。