桜の神子、愛に咲く



 葵の心臓が激しく鼓動した。彼女は目を上げ、焔夜の瞳を見つめた。


「焔夜様、私…あなたを愛してる。神様でも、人間でも、あなたのそばにいたい」


 焔夜の瞳が揺れ、彼は葵をそっと抱き寄せた。彼女の額に、優しく唇を寄せ、囁いた。


「葵、汝は私の心を溶かした唯一だ。神としてではなく、焔夜として、汝を愛する」


 二人の周りで、桜の花びらが舞い上がり、聖域は光に満ちる。
 葵は焔夜の胸に顔を埋め、涙をこぼした。


「ありがとう、焔夜様。私、ずっとあなたのそばにいる」


 その瞬間、聖域の光が二人の愛を祝福するように輝き、桜の木が黄金の光を放った。
 紫苑が遠くからその光を見守り、微笑んでいた。


「今代の神子さまは桜ノ神と仲睦まじい……きっとこの国は、これまで以上に繁栄するだろう」






 一方、春霞村では、藤井家に暗い影が落ちていた。
 美桜と貴代、華桜は神殿から追放され、村での地位を失っていた。

 美桜が葵から奪った桜色の着物は、呪符の失敗で焦げてボロボロになり、彼女の美貌も憔悴で色あせていた。

 村人たちは彼女たちを避け、かつての称賛は嘲笑に変わっていた。


「ほら、あの美桜様よ。神子になれるって豪語してたのに、禁忌の魔術を使ったんだって!」

「藤井家、没落したらしいね。貴代様も借金まみれで、屋敷を手放したって」


 村の広場でそんな噂が飛び交い、美桜は髪を乱してうつむいた。貴代は歯を食いしばり、華桜に八つ当たりした。

「全部あんたの姉貴のせいよ! あの子さえいなければ…!」


 華桜は泣きながら反論した。


「母様だって、葵を虐めてたじゃない! 私、こんな生活嫌よ!」

 美桜は広場の片隅で、かつての華やかな自分を思い出し、悔しさに震えた。


「葵…あんたのせいで…!」


 だが、彼女の声は村人たちの嘲笑にかき消され、かつての栄光は完全に失われた。