だが、その時、聖域に眩い光が炸裂した。焔夜の本体が現れ、黒い霧を一瞬で払拭した。
 彼の赤い瞳は怒りに燃え、聖域全体に神聖な力が満ちた。焔夜は葵の側に瞬時に現れ、彼女を腕に抱き寄せた。


「葵、無事か?」


 葵は震えながら焔夜の胸にしがみつき、涙をこぼした。


「焔夜様…怖かった…」


 焔夜は葵の髪を優しく撫で、囁いた。


「もう大丈夫だ。私の花嫁を、誰も傷つけはせぬ」

 
 焔夜の視線が美桜の隠れている場所に向けられ、彼女は凍りついた。焔夜が手を振ると、桜の木から放たれた光が呪符を焼き尽くし、美桜を晒し出した。
 群衆がどよめき、紫苑が美桜に迫った。