「葵…あんたの夢は、ここで終わりよ」
試練が始まった。葵が石舞台の中央に立つと、桜の木から光が放たれ、焔夜の幻影が現れた。それは、焔夜の姿を借りた神聖な存在で、葵の心を試すために現れたものだった。幻影は低く響く声で問うた。
「葵、汝は何のために神子となる? 己の欲望か、国のためか?」
葵は深呼吸し、真っ直ぐに答えた。
「私はこの国に平和を、皆に幸せを願います。私のような、虐げられた者にも希望があると、示したいんです」
その言葉に、幻影の目が柔らかく輝いた。
「ならば、汝の心を試そう」
突然、聖域に異変が起きた。桜の木の光が乱れ、黒い霧が葵を包んだ。美桜が隠した呪符が発動し、聖域の結界が揺らいだのだ。
葵は霧の中で幻影を見失い、恐怖に襲われた。
「これは…!? 焔夜様、助けて…!」
群衆がざわめき、紫苑が叫んだ。
「何!? 聖域に穢れが! 誰かが禁忌を犯した!」
美桜は陰でほくそ笑んだ。
「これで葵は終わりよ。神子になんてなれない!」



