最終試練「神の審判」を迎える朝、厳粛な空気に包まれていた。聖域の中心にそびえる巨大な桜の木は、朝日を受けて黄金に輝き、神聖な力を放っていた。
 試練に残ったのは葵ともう一人の娘だけで、他の者はすべて脱落していた。巫女長の紫苑が、石舞台の前に立ち、厳かに宣言した。


「最終試練は、桜ノ神の幻影と対峙し、その審判を受けるもの。真の神子たる者、神の心と共鳴し、国に繁栄をもたらす力を示さねばならぬ。準備せよ」


 葵は純白の着物をまとい、桜の簪を髪に挿して石舞台に立った。
 彼女の心は緊張で震えていたが、焔夜の言葉――「汝の道は、私が開く」――が勇気をくれた。彼女は目を閉じ、桜の木に祈りを捧げた。

「焔夜様。どうか、私に力を…この国を守る力をください」


 一方、神殿の外では、美桜と継母の貴代が密かに策略を進めていた。美桜は試練の場に潜入し、葵を陥れるため、聖域の結界を乱す呪符を隠していた。
 それは、神殿の禁忌とされる魔術で、発見されれば重罪だった。貴代が囁いた。


「美桜、失敗は許されないわ。あの子を神子にしたら、藤井家の名誉は地に落ちる。必ず潰しなさい」


 美桜は頷き、葵から奪った桜色の着物をまとい、聖域の陰に潜んだ。