美桜は葵を睨み、扇子で口元を隠して囁いた。
「あんた、調子に乗ってるみたいだけど、今日で終わりよ。神子は私になるんだから」
彼女の目には、嫉妬と策略の光が宿っていた。華桜もそばで頷き、葵に敵意を向けた。
「姉様が神子になれば、藤井家の名誉は私のものにもなるわ。葵、あんたはここで終わりよ」
試練が始まった。娘たちは一人ずつ石舞台に上がり、桜の木に祈りを捧げ、聖域の力を受ける。
だが、聖域は容赦なかった。偽りの心を持つ者は、桜の木から放たれる風に弾かれ、舞台から転げ落ちた。数人の娘が次々に失敗し、泣きながら退場した。
美桜の番が来た。彼女は自信満々に舞台に上がり、扇子を優雅に振って祈りを捧げた。
「桜ノ神様、私、美桜をお選びください! この国にふさわしい花嫁は、私しかいません!」
だが、桜の木は冷たく揺れるだけだった。突風が吹き、美桜の扇子が飛ばされ、彼女はよろめきながら舞台にしがみついた。
「何!? こんなはずないわ!」
群衆のざわめきが広がり、紫苑が冷たく言う……神の意志は明らかだ。次に進め、と。
葵の番が来た。彼女は深呼吸し、石舞台に上がった。
美桜が舞台の脇で何かを呟き、葵の足元に小さな石を投げつけた。葵はつまずき、膝をついた。
群衆がどよめく中、美桜が叫んだ。
「ほら、見て! あの子、舞台で転ぶなんて、神子にふさわしくないわ!」
葵は唇を噛み、立ち上がろうとした。だが、その時、彼女の周りに桜の花びらが舞い上がり、暖かな光が彼女を包んだ。
焔夜の姿が、聖域の中心に現れた。彼の赤い瞳は葵を見つめ、静かに言った。
「立て、葵。汝の心は、どんな妨害にも屈せぬ」



