桜ノ国の神殿は、夜の静寂に包まれていた。桜の庭での最初の試練を終え、葵は他の娘たちとともに神殿の奥深くにある「月影の間」に案内された。

 そこは、桜ノ神の意志を直接試す第二の試練の場だった。壁には桜の花が描かれ、床には水晶が敷き詰められ、まるで月光を映す湖のようだった。巫女長の紫苑が厳かな声で告げた。


「第二の試練は『神との対話』だ。桜ノ神に心を開き、その声を聞くことができる者だけが、次の段階に進む。偽りの心は、神に見透かされる」


 葵は純白の着物を握りしめ、緊張で息を呑んだ。最初の試練で桜の木が輝いたことは、彼女にわずかな自信を与えていたが、こんな神聖な場に自分がいること自体、夢のようだった。
 対照的に、美桜は葵から奪った桜色の着物をまとい、自信満々に前に出た。


「私には簡単よ。神様は私の美しさと気品を選ぶに決まってるわ」


 華桜も続くが、彼女の目は不安そうに揺れていた。葵は静かに列の後ろに立ち、心の中で祈った。

「神様…もし本当にあなたが私を見ててくれるなら、力を貸してください…」