桜の神子、愛に咲く




 試練の場は、神殿の奥にある桜の庭だった。巨大な桜の木の下に娘たちが円形に並ぶ。
 最初の試練――「心の清らかさを示す儀」が始まった。巫女たちが配った小さな木の杯に、各自が自分の血を一滴垂らし桜の木の根元に捧げるのだ。

 清らかな心を持つ者の血は、桜の木を輝かせると言われていた。

 美桜が最初に進み、自信満々に血を捧げた。だが、桜の木はわずかに揺れただけで、光は放たなかった。

 美桜は顔を赤らめ、「こんな試練、意味ないわ!」と吐き捨てた。
 華桜も同様に失敗し、不満げに下がった。他の娘たちも次々に試したが、桜の木は静かなままだった。

 葵の番が来た。彼女は震える手で杯を持ち、指先に針を刺した。血が一滴、杯に落ちる。美桜が嘲る声が響いた。


「無駄よ、葵。あんたの血なんて、穢れてるに決まってる!」


 だが、葵が血を桜の木の根元に捧げた瞬間、木全体がまばゆい光を放ち、桜の花びらが嵐のように舞い上がった。群衆が息を呑み、紫苑の目が開かれた。


「これは…!」


 紫苑が呟く中、葵は驚きで立ち尽くした。光の中、焔夜の姿が一瞬だけ現れ、葵に微笑みかけた。彼の声が、彼女の心にだけ響いた。


「よくやった、葵。汝の心は、私が見込んだ通りだ」