葵は怯みながらも、焔夜の言葉を思い出し、背筋を伸ばした。
「これは…私の着物です。神様が、私にくださったもの」
美桜は嘲笑し、群衆に聞こえるように叫んだ。
「神様ですって? こんなみすぼらしい子が? 笑わせないで!」
華桜も加わり、バカにした声で言う。
「そうだよ! あんたみたいな子が神子になれるわけないじゃない!」
その時、神殿の奥から厳かな鈴の音が響いた。巫女長の紫苑が現れ、静かに言った。
「騒がしい。神子選定の儀式を始める。桜ノ神の試練に耐えられる者だけが、神の花嫁となる資格を得る」
紫苑の視線が葵に止まり、わずかに眉を動かした。
「…その娘、名は?」
葵は震えながら答えた。
「藤井…葵です」
紫苑は頷き「ならば、試練に参加せよ。神の目が、すべてを見ている」と告げた。



