桜の神子、愛に咲く




 神殿は、桜の木々に囲まれた荘厳な建物だった。白木の柱に、金と朱の装飾が施され、夜空の下で神聖な光を放っていた。門前には、儀式に参加する娘たちが集まり、華やかな着物と笑い声で賑わっている。
 美桜と華桜もそこにいた。美桜は、葵から奪った桜色の着物をまとい、自信満々に村人たちに微笑みかけていた。


「美桜様、さすがです! この着物、神子にふさわしい!」


 村人たちの称賛に、美桜は扇子を振って応えた。


「当然よ。私こそ、桜ノ神の花嫁にふさわしいのだから」


 華桜も負けじと、華やかな桃色の着物で周囲の注目を集めていた。
 葵は神殿の陰に立ち、息を潜めた。彼女の純白の着物は、月光に照らされてほのかに輝いている。

 だが、粗末な暮らししか知らない葵は、こんな場所に自分がいることが信じられなかった。


「私…本当にここにいていいのかな…」


 その時、焔夜の声が再び心に響いた。


「進め、葵。汝の場所はここだ」


 葵は深呼吸し、門をくぐった。すると、群衆がざわめき、彼女に視線が集まった。

 純白の着物は、他の娘たちの華やかな装いとは異なり、神聖で清らかな美しさを放っていた。美桜が葵に気づき、顔を歪めた。


「あんた…! どうやってここに!? その着物、どこで盗んだの!?」