○神の儀と白雪の試練


 暁宮での生活がひと月を過ぎたころ。
 白雪に“花嫁の資格”を試すという、神々の儀が告げられる。

 「夜暁尊の花嫁となるには、三つの“審神(さにわ)”を受けねばならぬ。神々の中には、未だそなたを認めぬ者もいる」

 「……承知しました」

 白雪は恐れを抱きながらも、決して退かない。

 第一の試練は「水鏡(みかがみ)」の間で己の心と向き合うこと。
 鏡に映るのは、これまでに浴びせられた罵声、蔑み、過去の傷。

 「白雪、なんて生意気な子……!」

 「どうせお前なんて、姉の影だろう?」

 水面から聞こえる声に、白雪の心が裂かれそうになる。

 だが――

 「わたしは、わたしです」

 彼女は鏡を睨み返す。

 「どれだけ誰かに否定されても、わたしは、生きてきた」

 その言葉と共に、水鏡は静かに割れた。

 第一の審神、合格。