暁音は青年となり、神々の理も、人の苦しみも知る存在として育っていた。
ある日、彼はふたりに告げた。
「父上、母上。ぼくは、神域を出て旅に出ます」
「……旅に?」
白雪が少し驚いた顔をすると、彼は微笑んだ。
「人々の中に入りたいんです。神という名を持たず、ただの“ひとりの存在”として、生きてみたい」
夜暁尊はしばらく黙っていたが、やがて静かに頷いた。
「行け、暁音。神の名も力も捨てよ。そなたはこの世に必要な“光”ではあるが、それ以前に、ひとつの魂だ。好きに生きるがよい」
白雪は、旅支度を整えながら、息子に言った。
「わたしたちは、いつでもここにいます。帰ってきたら、あなたの旅の話を聞かせてね」
暁音はふたりに抱きしめられ、神域を後にした。その姿は、朝の光の中に溶けていった。



