⚪︎守護の誓い


 夜暁尊は、白雪と暁音を守るため、
 自ら神域の境界を再構築し、護神の結界を張った。

 だが、白雪は黙ってはいなかった。


 「戦うのは、あなたひとりじゃありません」

 「白雪……!」

 「わたしも、この子の母。神の后。もう、守られるだけの存在には戻りません」


 白雪は、かつて試練を乗り越えた神殿へ再び足を運び、
 “祈り”を捧げることで、神后としての力をより強く得た。

 その祈りは、純粋で、まっすぐで――闇をも溶かす光となって神域に広がった。



⚪︎闇の襲来


 ある満月の夜、ついに闇が神域を襲う。

 漆黒の炎が花々を焼き、風を止め、
 神々すら立ちすくむほどの威圧を放つ。

 「暁音を差し出せ。さすれば、この世界を“新しく”してやろう」

 焔夜がそう言ったとき、
 幼い暁音が、白雪の腕からするりと立ち上がり、彼の前に歩み出た。

 まだ三つにも満たぬその子が、ただ静かに見つめる。

 「……おまえは、悲しい神」

 その一言に、顔がわずかに歪む。

 「……何を……」

 「祈られることも、愛されることもなくて、寂しかったんだね」


 幼子の声に、黒い炎が揺れる。
 白雪が駆け寄り、息子を抱きしめながら言う。

「それでも、わたしたちは誰の祈りも否定しない。あなたが望むのなら、もう一度、神として――祈られる存在になってください」