⚪︎静かなる幼き神子


 暁音――神と人の血を引き、生まれながらに神気を纏った子。彼は、言葉を話す前から空を指し、人の心を静かに読み、花の枯れる声を感じ取ることができた。

 白雪が抱き上げると、彼は必ず微笑み、
 夜暁尊の前では、不思議な静けさをたたえていた。


 「……この子は、もはや“子”ではない」


 夜暁尊はつぶやいた。

「生まれながらにして、神の理を理解し、人の情を受け入れている。まるで“最初の神”のようだ」


 白雪は彼の髪を梳きながら、静かに囁いた。


 「それでも、この子は、わたしたちの“息子”です。わたしの腕で育て、わたしの声で守ってみせます」


 だが、暁音の存在が明らかになるにつれ、神域の奥――封じられていた闇の神々が動き出した。

 彼らはかつて、人の祈りを集めながらも、
 力を持ちすぎたために封じられた古き神性(こしんせい)。

 そのひとりは言う。


 「暁音――神と人の交点。あれを我らの元へ迎えれば、封を破り、この世の理を変えられる」

 「神々の秩序を終わらせ、“新たな神界”を築くための鍵だ」


 こうして、暁音を狙う者たちが、神域に侵入しはじめる。