⚪︎神界に響く産声


 その産声に、遠くの神域にすら光が届いた。
 争いを続けていた神々が動きを止め、天と地を見守っていた民たちが、ふと手を合わせる。

 誰もが、本能的に理解した――何かが、生まれ変わる。

 「暁の子」その名にふさわしく、
 この子の誕生は、世界の夜明け……はじまりだった。

 出産から数日。白雪は布団の中で、赤子の寝息を聴いていた。
 隣には夜暁尊。
 いつになく、優しく、穏やかな表情でその子を見つめている。


 「……こんな気持ちになるとは、思わなかった」

 「神様でも、そう思われるのですね」

 「そなたが教えてくれた。人の喜び、痛み、そして……無償の愛というものを」


 白雪は、彼の肩に頭をもたれさせた。


 「では、これからは三人で、愛を育てていきましょう」

 「……ああ。もう、そなたとこの子を手放さぬ」


 神でありながら、誰よりも人を想う存在となった夜暁尊。そして、虐げられた少女は今、神すら変える愛を育てていた。