○神が棲む山


 霧の山・日向岳。その奥には、「古き神々」が今も眠るといわれていた。
 ある日、白雪は草を摘みに入った山中で、一羽の傷ついた白鴉(しらがらす)を助ける。

 「おまえ……私の声が、聞こえるのか」

 その声は、白鴉の口から直接響いてきた。神の眷属である白鴉は、山の神・**夜暁尊(やあかつのみこと)**の使いだった。

 「人の身にして、私の言の葉を聞くとは。まさか、そなた……」

 白雪の前に現れたのは、黒髪に金の瞳を持つ神の姿をとった青年だった。彼は言う。

 「私の花嫁となれ。そなたにはその資格がある」