⚪︎奇跡の懐妊


 白雪の身体に宿った命は――神と人の血を併せ持つ、前例のない存在だった。


 「神后様、ご懐妊を……!」


 神域に歓声とざわめきが広がる。
 しかし、喜びの裏で、神々の会議は騒然としていた。


「神と人の間に子が……? それは、天律に反する禁忌」

「許されぬ……神子は禍いを呼ぶと古き言葉にある」

「夜暁尊が、ついに人の情に呑まれたのか」


 彼らは“暁の子”の存在を、秩序を揺るがすものとして恐れた。

 だが、神々の不安に対し夜暁尊は神議にて堂々と語る。


「私は確かに、神としての理を超えた。だが――そなたらは忘れたか? 神とは、もともと人の祈りから生まれた存在だと」

「白雪は、私が長き孤独の夜を越える光となった。そしてこの子は、神と人が繋がりうる証だ」

「それでも、この子を否定するというなら……私は、すべての神位を捨て、白雪と子のために戦おう」


 その言葉に、神々は言葉を失った。
 人であった白雪が、神をこれほどまでに変えたという事実が、何よりも重く響いた。