⚪︎花嫁と神の夜
儀の後、ふたりは神の宮・最奥の殿にて、ふたりきりになる。
白雪は紅を引かれ、夜暁尊の前に静かに座す。
「本当に……いいのか? これは、神と人とが結ぶ契りだ」
「はい。あなたのことを想う気持ちは、もう止まりません。それが神であろうと、人であろうと、わたしには関係のないことです」
夜暁尊は静かに白雪を抱きしめ、額を重ねた。
「そなたを手に入れてなお、私は怖い。いずれ、そなたが年老い、死にゆく日が来る。そのとき、私はきっと壊れてしまう」
白雪は彼の頬に手を当てた。
「それでも、わたしはこの時を選びました。たとえ限りある命でも――あなたのそばに生きることを」
ふたりは静かに唇を重ね、夜の帳に包まれていく。神である彼が、たった一度だけ、人として誰かを抱く夜。
それは夜暁尊と白雪が、本当の意味で夫婦となった瞬間だった。



