神々は白雪を、「神嫁」を超えた存在――神后(しんこう)として正式に迎えることを決定した。
それは、神の伴侶として、神々と人の間に立つ役目。
「儀をもって、夜暁尊の“真名”を授かることになるだろう。それは、神の本質を知り、同時に重き試練を負うことを意味する」
白雪は頷いた。
「わたしは、逃げません。あなたと、共にあると誓ったのですから」
銀月の夜、神后の儀が行われる。
白銀の衣を纏い、星の冠をいただいた白雪は、神の前へと歩みを進めた。
「白雪よ。そなたは、我が神の名を知ることを望むか?」
「はい。夜暁様のすべてを、知りたいのです」
夜暁尊は静かに、己の真名を語った。
「――我が名は、禍津日天夜尊(まがつひあまよのみこと)。闇より生まれし、かつて“禍神”と呼ばれた存在である」
場が凍りついた。
「私は光に拒まれ、神々の端に追いやられた。
だが、そなたが“私を美しい”と言ってくれたその瞬間――私は初めて、神であっても、人であってもよいと思えたのだ」
白雪は震える声で答えた。
「その名を、恐れはしません。あなたは……わたしの、愛する方です」
その言葉に応じて、夜空に銀の光が瞬いた。
それは、神と人とが交わした、永遠の誓いの証だった。



