○神嫁としての日々



 一方、白雪は正式に夜暁尊の花嫁として、神々に認められていた。

 春の宴、神々の集い。彼女は柔らかく微笑み、神の隣に座する。

 「……ここにいて、よろしいのだと、ようやく思えます」

 白雪がそっと囁くと、夜暁尊は目を伏せた。

 「私はな……そなたを花嫁として選んだが――
  人として、そなたを“想ってしまっている”自分に、抗えぬ」

 「……それは、いけないことなのですか?」

 「私は、神。そなたは人。
  想いが深まれば深まるほど、終わりが来ることを恐れてしまう」

 白雪はそっと、神の手を取った。

 「わたしは……この瞬間が続くのなら、未来の恐れにも耐えられます。
  あなたの隣に、ずっといたい」

 夜暁尊の瞳が、苦しげに揺れる。
 そして――静かに彼女を抱き寄せた。

 「……そなたが、欲しい。すべてを、私のものにしてしまいたいほどに」