○穢れの封印


 山の麓、霞郷の奥に、誰も近づかぬ祠があった。

 その地下深くに眠るのは、かつて夜暁尊によって討たれ、封じられた**“穢れ神(けがれがみ)”**の一柱――
 黒羽ノ命(くろはの みこと)。

 かつては夜を支配しようとし、人の負の感情を糧として暴走した神。

 そして今、白雪への憎しみと嫉妬に狂った姉・美鶴が、禁を破りその封印の扉を開いた。

 「わたしを……妹の影にしたあの子……神に愛されるに値しない!」

 闇の神は囁く。

 《汝の願い、我が力で叶えよう。代償は――汝の心》

 「かまわない。あの子を地に引きずり下ろせるなら……わたしの魂など……!」

 美鶴の身体は、闇の羽に包まれていく。

 かつての美貌はそのままに、神に近い力を纏い、
 彼女は**“黒羽姫”**として蘇った――