ウズメの末裔令嬢は龍に恋し舞う

龍の背に乗せてもらって着いたのは高い山の上にある神社の後ろにある岩山だった。

雷龍(らいりゅう)は自分達が収まる程の大きな岩に呪文を唱えると、その中は(きら)びやかな御殿だった。

閃羅(せんら)様、お帰りなさいませ」
お付きにそう言われ深子(みこ)は緊張する中、広間に通される。

「つまり、結婚は先祖の勝手な約束なんだ。
しかし先祖の話も本当で自分の加護がないと災いが起きる」

あくまで雷龍(らいりゅう)の意志じゃないという言葉に少しホッとした深子(みこ)は最後の事はどういう事かと考えた。


「去年先代が逝去した。そなたの地は今年は死人の数が多いはずだ」

確かに去年の鎮魂の舞の後、庭の掃除中に例年よりも葬式を見たし、家では今年は鎮魂の舞を楽しみにしてるお年寄りが多いと聞いた。

夏は過ぎたのに台風が続き、不作が続いた。

(じゃあ本当に雷龍の力は本物なんだわ!)

「一応、かたちだけ(ちぎ)ればそなたの地を逆に加護できるのだが」


(ちぎ)る!?)

男女の営みを一瞬想像して内心焦る深子(みこ)
「まあ、(ちぎ)ると言っても我が神社で神主が儀式をするだけで終わる。

安心しろ」

この姿だし純潔を奪ったりしないという意味で雷龍(らいりゅう)はそう言った。

(あ、恥ずかしい)

「と、いう訳だ。どうだろう?
(さら)ったも同然として連れてきたが」 

あくまでかたちだけ参加して欲しいが雷龍(らいりゅう)深子(みこ)に命令はしたくないのだろう。

雷龍(らいりゅう)深子(みこ)の家での扱いまでは知らない。
舞の神の末裔で大事にされ、泣く泣く岩場にくくりつけられたと思っているのだろう。


「そなたは神事に参加してくれるか?」

「あの、私には双子の妹がいまして」

「そうなのか。末裔(まつえい)は2人いたんだな」

「はい。
妹はとても美しく、綺麗な舞を踊ります。
私で良いのでしょうか?」

「見ていた。先程の舞だろう?
素晴らしかった」

「!」
あんな姿で、しかも一部分の舞を褒められる事はないと思っていた深子(みこ)は驚いた。

その2人だけの甘い空気に広間にいた女中達にもまあ!という顔をされ、褒められ慣れしてない事もあって深子(みこ)
「も、もういいですからっ!ありがとうございます」

礼を言い小さく頭を下げる事しかできなくなった彼女を見て雷龍(らいりゅう)はははっ!と笑った。

「私にはあれが1番の舞に見えた。

どうだ?

かたちだけでいい。
しばらく私の側にいて欲しいのだが」

「はい。閃羅(せんら)様」

そうして2人の前で神主が祝詞をあげ儀式は終わった。

「これでそなたの地は護られる」
災いを起こす龍なのに、平安を約束でき、安堵したような返事に深子(みこ)は暖かい気持ちが芽生えた。

(この方はとても優しいのだわ)

暖かい気持ちと、それに加えてなぜかドキドキする。

その初めての感覚を深子(みこ)はどう扱ったらいいかまだ分からなかった。