「さあさ、深子(みこ)様ご覧下さい!」
女中に手を引かれ連れられて来た一室には美しい白無垢(しろむく)色打掛(いろうちかけ)が並んでいた。

かたちだけだった(ちぎ)りをした深子(みこ)閃羅(せんら)は今度は本当に式を挙げるのだ。

今はその花嫁衣装を選ばせたいのだろう。

「私はなんでもいいですよ」
実家の屋敷にいた頃より豪華すぎる衣装に深子(みこ)は遠慮する。
「駄目です。閃羅(せんら)様から男の私には分からないから選んで欲しいと言われてます」
「!」

今知ったこんな時までの彼の気遣いに深子(みこ)の心臓はまた跳ねた。

「どうでしょう?」
美しい羽根が咲くように刺繍された白無垢(しろむく)姿、頭には蘭の花を着けられた深子(みこ)閃羅(せんら)の前まで来る。

「ああ。似合っている」
と笑い向き合う。

「さて色打掛(いろうちかけ)はどうするかな?」

「あの・・・、閃羅(せんら)様」
「?」
「私、着たい衣装があります」

彼女がハッキリそう言うなんて珍しい。
が、それを聞いて閃羅(せんら)は笑う。


よく晴れた日、深子(みこ)閃羅(せんら)(さかずき)(ちぎ)りを交した。
「さあ深子(みこ)、舞ってくれ」
閃羅(せんら)の声掛け巫女姿に着替えた深子(みこ)は彼の前で婚礼の舞い踊る。

まるで女神のように羽根の付いた羽衣(はごろも)深子(みこ)閃羅(せんら)を恋うように動かし、その手を花婿は取る。

閃羅(せんら)様、ご一緒に!」
笑う妻の前で彼は龍に姿を変えて2人の舞は長く、末永く続くのだった。

【完】