日が暮れ始めると街には灯りを持って神社に集まる者達で人は溢れた。
「雷龍と結婚なんて舞華様どうなっちゃうの?」
「猿田彦様とは破談したんでしょ」
「ええ!?じゃあ望んで龍と結婚するの?」
「さあ?」
式は大人が多い。
夜に結婚式なんて不思議と皆は笑う。
大人に手を繋がれ子供達はお祭りみたいと興奮している中、豪華な白無垢に身を包んだ舞華の花嫁行列は神社にやって来て人々はその姿に息を飲んだ。
「舞華様、舞うのかしら?」
「婿の雷龍はどこだ?」
噂をすると神主の様子な慌てている。
確かに婿の姿は神社にない。
「雷龍様?」
舞華は婿の姿が見えず戸惑った。
しかし、しばらくし草陰から現れた迫力のある角を生やした紋付き姿の美しい閃羅の登場に誰もが色めきだった様子だった。
「来てくれたのね」
ほっとする舞華だが閃羅は舞華を見るなりピクッと眉間を動かし固まったように見えた。
ようやく式が行えると神主が前に出る。
しかし
「待ってくれ」
閃羅が通る声でそれを引き留めた。
「雷龍様?」
どうしたのと舞華は彼を見る。
「確かに細女の末裔は2人いると聞いていたが私の花嫁が見当たらない」
彼が言うと辺りには騒めきが起こる。
「てっきり私と深子の式かと思ったらこれはどういう事だろう」
雷龍は舞華を見て問う。
「雷龍様、花嫁は私です」
舞華は彼にうっとりした顔を見せて訴える。
「ほう、そなたが深子の妹なのだな。
街で会ったな。聞いているぞ。
そなたの舞は素晴らしいのだろう?」
「はい」
その言葉に舞華は
(なんだ。アイツ、ちゃんと私を立てるじゃない)
と内心、微笑んだ。
「そうか。そなたの舞は素晴らしいと思うが聞いてくれ。
深子の踊りは愛らしい」
ピシャリと言い切られ、舞華は冷や水を浴びた気分になった。
凍りついた顔がようやく動き
「嫌ですわ、雷龍様。
さすがの花嫁の私もお姉様と比べられると妬いてしまいますわ」
と笑顔を作り直す。
「ああ、そなたの人相、いや表情からよく分かる。
才に恵まれている者は負けん気と我が強からなあ。
せいぜいその角隠しを深く被り、婿に逃げられる事のないよう気をつけなければ、だな」
この苦言には誰もが眉を顰めいた。
「何よ!私を馬鹿にしているの!?」
花嫁から般若のように舞華の表情は崩れ、一層険しくなった。
「今言ったばかりだろう!頭が弱い奴め。深子はどこだ!?」
紋付きの姿の彼は、たちまち巨大な龍に変わり
舞華の目の前の巨大な口を開く。
「ヒイッ!」
化け物・・・と腰を抜かす彼女に話にならないと雷龍は深子の屋敷をめがけて向かった。
街からはぎゃあ!化け物と悲鳴が上がった。
「あっちは屋敷よ」
「ああ・・・」
舞華達家族はそれを見る事も忘れ、ただただ腰を抜かす事しかできなかった。
その頃、牢の中で深子は地鳴りを聞いた。
「深子!いないのか!?」
「閃羅様!」
下から聞こえる声に雷龍は気づき、「下がっていろ」と簡単に窓を壊し、数日ぶりだが喜びを抑えきれず深子は閃羅に駆け寄り彼の龍の口に手を当て抱きついた。
「怪我はしてないな。乗れるか?」
そう聞かれ深子は背中に乗って街の上空を舞う。
「深子、舞えるか」
先程まで式を挙げようとしていた神社の前を龍は飛ぶ。
「はい」
手だけの振り付けだ。
だけど羽根のような羽衣は深子と共に舞っていた。
「見て!あれが婚礼の舞でしょう?」
神社にいる誰かの子が見て聞く。
「ええ。すっごく綺麗ね」
「まるで、天女の嫁入りみたい」
その時ばかりは大人も子どもも誰もがそう口々に言ったのだった。
「雷龍と結婚なんて舞華様どうなっちゃうの?」
「猿田彦様とは破談したんでしょ」
「ええ!?じゃあ望んで龍と結婚するの?」
「さあ?」
式は大人が多い。
夜に結婚式なんて不思議と皆は笑う。
大人に手を繋がれ子供達はお祭りみたいと興奮している中、豪華な白無垢に身を包んだ舞華の花嫁行列は神社にやって来て人々はその姿に息を飲んだ。
「舞華様、舞うのかしら?」
「婿の雷龍はどこだ?」
噂をすると神主の様子な慌てている。
確かに婿の姿は神社にない。
「雷龍様?」
舞華は婿の姿が見えず戸惑った。
しかし、しばらくし草陰から現れた迫力のある角を生やした紋付き姿の美しい閃羅の登場に誰もが色めきだった様子だった。
「来てくれたのね」
ほっとする舞華だが閃羅は舞華を見るなりピクッと眉間を動かし固まったように見えた。
ようやく式が行えると神主が前に出る。
しかし
「待ってくれ」
閃羅が通る声でそれを引き留めた。
「雷龍様?」
どうしたのと舞華は彼を見る。
「確かに細女の末裔は2人いると聞いていたが私の花嫁が見当たらない」
彼が言うと辺りには騒めきが起こる。
「てっきり私と深子の式かと思ったらこれはどういう事だろう」
雷龍は舞華を見て問う。
「雷龍様、花嫁は私です」
舞華は彼にうっとりした顔を見せて訴える。
「ほう、そなたが深子の妹なのだな。
街で会ったな。聞いているぞ。
そなたの舞は素晴らしいのだろう?」
「はい」
その言葉に舞華は
(なんだ。アイツ、ちゃんと私を立てるじゃない)
と内心、微笑んだ。
「そうか。そなたの舞は素晴らしいと思うが聞いてくれ。
深子の踊りは愛らしい」
ピシャリと言い切られ、舞華は冷や水を浴びた気分になった。
凍りついた顔がようやく動き
「嫌ですわ、雷龍様。
さすがの花嫁の私もお姉様と比べられると妬いてしまいますわ」
と笑顔を作り直す。
「ああ、そなたの人相、いや表情からよく分かる。
才に恵まれている者は負けん気と我が強からなあ。
せいぜいその角隠しを深く被り、婿に逃げられる事のないよう気をつけなければ、だな」
この苦言には誰もが眉を顰めいた。
「何よ!私を馬鹿にしているの!?」
花嫁から般若のように舞華の表情は崩れ、一層険しくなった。
「今言ったばかりだろう!頭が弱い奴め。深子はどこだ!?」
紋付きの姿の彼は、たちまち巨大な龍に変わり
舞華の目の前の巨大な口を開く。
「ヒイッ!」
化け物・・・と腰を抜かす彼女に話にならないと雷龍は深子の屋敷をめがけて向かった。
街からはぎゃあ!化け物と悲鳴が上がった。
「あっちは屋敷よ」
「ああ・・・」
舞華達家族はそれを見る事も忘れ、ただただ腰を抜かす事しかできなかった。
その頃、牢の中で深子は地鳴りを聞いた。
「深子!いないのか!?」
「閃羅様!」
下から聞こえる声に雷龍は気づき、「下がっていろ」と簡単に窓を壊し、数日ぶりだが喜びを抑えきれず深子は閃羅に駆け寄り彼の龍の口に手を当て抱きついた。
「怪我はしてないな。乗れるか?」
そう聞かれ深子は背中に乗って街の上空を舞う。
「深子、舞えるか」
先程まで式を挙げようとしていた神社の前を龍は飛ぶ。
「はい」
手だけの振り付けだ。
だけど羽根のような羽衣は深子と共に舞っていた。
「見て!あれが婚礼の舞でしょう?」
神社にいる誰かの子が見て聞く。
「ええ。すっごく綺麗ね」
「まるで、天女の嫁入りみたい」
その時ばかりは大人も子どもも誰もがそう口々に言ったのだった。

