◇影の花


 桂木蓮華としての名を与えられ、わたしは大奥へと足を踏み入れた。
 けれど誰よりも、わたし自身が知っている。

 ――これは偽りの身。
 わたしは姉ではない。ただの、姉の「影」。

 それでも、将軍様はわたしを追い返さなかった。
 初めての目通りのあと、彼はこう言ったのだ。

 「面白い。しばらくこの“影”を飼ってみよう」

 そうして、わたしは大奥という猛禽の巣に放り込まれたのだった。