花影に咲く、大奥の紅の華




 ◇永遠に咲く花



 春の宵。
 産室から聞こえる小さな泣き声に、志乃は揺り籠を覗き込んだ。

 その横で、将軍様が静かに笑っている。

 「この子の名は、晴真(はるま)としよう。春に生まれ、真っ直ぐに生きるように」

 「……はい。晴真。わたしたちの希望ですね」

 ふたりは見つめ合い、やさしく唇を重ねた。

 その先にある未来を信じて。

 愛を恐れず、名を捨てず、影から光へと至った女――志乃。
 その生き方は、大奥という世界に、ひとひらの真実の花を咲かせたのだった。



              〈完〉