◇姉の策略、第二幕

 ある日、大奥に異変が走った。

 志乃が突然、御殿の回廊で女中を突き飛ばしたと“密告”が入ったのだ。

 「御台所候補が手を上げるなど、前代未聞でございます!」

 取り乱す年配の奥女中たち。
 その陰で、蓮華はほほ笑んでいた。

 「妹はもう“自分”として立ったのよ。ならば、容赦はいらないわね」

 しかも、その女中は――姉に仕える者だった。

 作り上げられた罪。だが、事態は重大だった。
 下手をすれば、志乃は御殿を追われ、桂木家にも累が及ぶ。

 梅が泣きながら膝をつく。

 「志乃様……姉様は本気です。あなたを、潰しにかかっています!」