怜司に導かれ、珠緒は宮廷の奥にある「藤の間」に通された。そこには、まるで彼女のために用意されたかのような、淡い藤色の十二単が置かれていた。
優桜院では、色の組み合わせが貴族の感性を示し、藤色は高貴さと清らかさを象徴した。
「これを着なさい。君のような者が、この場で埋もれるのは惜しい。」
怜司の言葉に、珠緒は戸惑いながら着替えた。鏡に映る自分は、母の気品を宿した姿だった。
会場である「桜の間」は、桜の装飾と香炉の薫物が漂う雅な空間だった。貴族たちは扇を手に和歌を詠み、階級を示す座次に厳格に従って座った。
怜司に導かれ、珠緒は上座近くに座り、驚いた。美桜は華やかな紅の十二単で得意げだったが、珠緒の清楚な美しさに貴族たちの視線が集まった。
皇帝、女御、東宮・悠真が入場し、宴が始まり悠真は整った顔立ちに穏やかな笑みを浮かべてみせた。
しかしその瞳は鋭く、場を見渡していた。珠緒は彼の視線が自分に留まるのを感じ、心がざわめいた。



