白銀の妖王は、笑わない少女陰陽師を恋う。



 人間が妖に怯える様子も、妖が人間を見下す様子も見られない。


「服を買うという話だっただろう。呉服屋は一本奥の通りだな」


 狗神は紫陽の戸惑いなど意に介さず、淡々と用事を済ませようと歩く。紫陽は未知の光景に息を飲みながらも、置いていかれないよう足を速める。

 そしてたどり着いた呉服店は、上等な反物ばかりを扱う大きな店だった。


「あらあらまあまあ。狗神様が直々にお越しだなんて珍しい。おっしゃってくださればちゃんと城までお持ちするのに」


 ここでも応対してくれた女主人は人間だった。

 少しふくよかで明るい中年の女性は、狗神に対して特に怯えた様子を見せるわけでもなく、むしろ気楽な調子でしゃべる。


「気にするな。最近はどうだ?」

「お陰様で特に変わったことはありませんよ。時々悪鬼が出ますけど、大きな被害もありません。……それで狗神様、今日はどういった物をお求めで?」

「今日は彼女の服を探しにきた。何か良い品があるか?」


 狗神のその言葉で、女主人はようやく紫陽に目を向けた。


「うん? あら、綺麗な娘さんだでございますこと。この方は?」

「俺の妻になる予定の人間だ」