白銀の妖王は、笑わない少女陰陽師を恋う。



「俺と二人は不満か?」

「いえ、決してそういうわけでは」


 咄嗟にそう答えたが、軽く目眩がする程度には不安だ。

 紫陽は小声で杏に尋ねる。


「あ、杏は良いのですか、狗神様が私と二人きりになっても……」


 普通、想い人が自分以外の女性と二人きりになるなんて嫌に決まっている。

 なのに杏はいつも通りの裏表ない……ように見える笑顔で「はい! これを機に親交を深めてください!」などと答える始末。


 「さ、どうかお気をつけて。楽しんできてください!」


 と言って、紫陽の肩を優しく叩いたのだった。



□



「ここが……」


 久しぶりの城の外。

 従者を付けることもなく、本当に狗神と二人きりで城を出てきてしまった。

 腕を組みながらさっさと進む狗神を追いかけるように歩きながら、紫陽は周囲をキョロキョロと見渡した。


 ──城下町は想像していたよりずっと賑わいのある場所だった。

 一見すると人間だけで形成している町と大きな違いはない。立派な門構えの屋敷や質素な長屋が区画別に建ち並び、職人町は民衆の明るい声があちこちで響き渡る。