白銀の妖王は、笑わない少女陰陽師を恋う。



 その後、食事を済ませた紫陽は、いつものように杏の手で着替えさせられ、髪を結い直される。

 そしてその髪の手入れがいつもよりずっと丁寧だ。化粧を施すのにもずいぶんと時間をかけていて、早起きしたはずなのに気づけばそれなりの時刻になっていた。


「ふう、こんなものねっ。うーん、でもやっぱり服が惜しい! あたしに合わせて仕立てた服だから紫陽様の魅力を引き出しきれていない!」

「そうでしょうか」


 着飾ることにこだわりのなかった紫陽にはその感覚はよくわからない。

 しかし、とりあえずこれでほぼ準備は完了したようだ。


「ありがとうございます。でも、杏は準備しなくて良いのですか?」

「え?」

「えっと……今から町へ行くのですよね、私と杏で。私ばかり着飾っても……」


 紫陽の言葉に、杏はしばらくきょとんとした顔をしていた。

 が、やがてカラカラと朗らかな声で笑いだす。


「あははっ、ごめんなさい紫陽様。あたしは留守番」

「……え? でも昨日、『一緒に町に行きましょう』って」

「あ、そっか言い方がわかりにくかったですね。今日は……あ、ちょうどいらっしゃいました」