いったい何の話だろう。狗神に向かって得意げに笑う杏に首を傾げる。
杏はそのまま続けた。
「というわけなので紫陽様。明日、一緒に町に行きましょう!」
「町?」
「はい! 服とか小物とかお化粧道具とか、色々と足りていない物があるので買い出しに! 城下は賑わっていて楽しいですよ〜」
話の流れがよくわからないが、楽しそうに目を輝かせる杏を見て何となく微笑ましい気持になる。
しかし、同時に閏の言葉が頭に響く。
『……杏の奴、昔からずっと主のこと慕ってんだよ』
『主だって杏のことは間違いなく特別に思ってる』
『誰が見ても相思相愛ってやつだろ』
紫陽に対していつも友好的で優しい杏。
だけどもし本当に杏が狗神のことを愛しているのなら、相思相愛であるなら……彼女にとって、狗神の「花嫁」という地位を与えられた紫陽の存在は、この上なく不愉快なのではないか。
表面で明るく取り繕っていても、内心良い感情を持っていないのではないか。
(それは……寂しい)
そう思ってしまったことに、紫陽は自分で驚いた。


