白銀の妖王は、笑わない少女陰陽師を恋う。




「紫陽様! ここにいたんですね! 気が付いたら姿が見えなくなっていたから焦りましたよ〜」

「あ……すみません」

「主、無事に紫陽様発見しました!」


 杏の後ろから悠然と歩いてきて、紫陽の前に立つ狗神。静かな声で「そうか」と答えて紫陽を見た。

 相変わらず、正面からまともに見るのをためらうほどの美貌。紫陽は唇を閉じたまま、深く頭を下げた。


「……閏がいたように見えたが。何をしていた?」


 紫陽は一瞬迷った後、頭を上げるも視線は伏せたまま、ゆっくり首を振った。


「何も」


 陰陽師である紫陽のことを警戒するのは当然のことで、むしろ杏や厨房で出会ったろくろ首たちのような反応が例外的。


 だから、告げ口のようなことをする気は起こらなかった。


「……」


 狗神は紫陽が嘘をついたことを当然わかっているはずだが、それについて追及することはなかった。

 ホッと胸を撫で下ろす紫陽の腕に、杏がギュッと抱きついてくる。


「ねえねえそんなことより紫陽様! 紫陽様はもうこの城での生活には慣れましたよね? ね?」

「え? ええ、まあ。杏のおかげでずいぶん慣れました」

「ほら言質取りましたよ主! 紫陽様がここでの生活に慣れたらちゃんと関わるようにするって言いましたもんね? ね?」