白銀の妖王は、笑わない少女陰陽師を恋う。



「こっちはこの城自慢の大庭園なんですけど、その一角が薬草畑になってるんです。医務室にいる化け狸の爺さんが手入れしてます。狸の爺さんが作る薬はよく効くんですよ! 」

「へえ」

「飲み薬は吐くほど苦くて塗り薬は地獄の果てが見えるぐらい沁みるのが玉に瑕ですけれど!」

「へ、へえ」

「もちろん人間の薬の調合も大得意ですから、紫陽様も怪我したらすぐ言ってくださいね! すぐ良くなりますよ!」


 それは安心なような安心じゃないような、微妙な感じである。

 そういえば涼風の屋敷にも薬草畑があり、薬の調合を専門にしている陰陽師がいたな……などと思い出す。貴重な薬を無能に使わせてはもったいないと言われ、紫陽は処方されたことがなかったが。あの薬もそれぐらい沁みたのだろうか。今となっては分からず仕舞いだ。


「次は厨房に行きましょう! この時間なら厨房の姐(ねえ)さんたちが昼餉の準備をしている頃合いじゃないかな。つまみ食いさせてもらっちゃいましょ!」


 杏は休むことなく進んでいく。

 普段から鍛錬していた紫陽ならいざ知らず、よく休憩も挟まず広い城をあちこち歩き回れるものだ。まあ、単に妖は体力の基準が人間と異なっているだけかもしれないけれど。