白銀の妖王は、笑わない少女陰陽師を恋う。

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「ねえ主。あたし、主のことは信頼してますけど、それにしたって説明が無さすぎると思うんです」


 月明かりを反射する池の波紋を静かに眺めていた狗神は、聞き慣れた側近の声にわずかに振り返った。

 不満げな面持ちで狗神の方を見る、海のような深い青髪の女。彼女はとんとんと軽い足取りで近づいてきて、狗神の隣に並んだ。


「杏か。彼女のこと、急に頼んで悪かったな」

「それは全然構いません。紫陽様、何だか見ていて飽きない可愛らしい人だし」

「そうか」

「でも不満です」

「何がだ」

「紫陽様のこと、せっかく気合入れて可愛く着飾ってあげたのに、主ってば手出さないんだもの。据え膳食わぬは何とやらとはよく言うのに」

「……」

「あ、無視ですか」


 手を出すどころか、「指一本触れない」とまで言ったと知ったら、杏はいったいどんな顔をするだろう。


 ──懸命に強くあろうとする臆病な少女。それが狗神の紫陽に対する印象だ。

 無表情で感情が読みにくいが、それでも隠しきれない恐怖心が目の前に立つとありありと伝わってきた。