白銀の妖王は、笑わない少女陰陽師を恋う。



 そうやってあまり納得できずにいる紫陽の背中を、杏は慈しむかのようにそっと撫でた。


「紫陽様はお若いのに、本当に立派なものですね。ほら、白くて綺麗な肌なのにところどころ傷跡が。戦う中でついた傷でしょ、これ」

「え、ええ」

「でもだめですよ気を付けないと。人間は妖と違って簡単に傷が治らないんですから」


 もう長らく痛んでいなかった傷だ。言われるまで忘れていた。こうやって心配されると、何だか逆に申し訳ないような気持ちにすらなる。


「よーし、では髪洗いますね」


 少ししんみりとした声色だった杏は、また元の調子に戻って言い、今度は紫陽の長い黒髪に触れた。

 他人に髪を触られるのもあまり好きではないが、既にしっかり体を洗われた後なのでもう黙っておくことにした。

 杏の手は優しくもキビキビと動き、あっという間に髪を洗い終わる。その上、何か花の蜜のような良い香りのする香油まで塗ってもらった。

 その後湯から上がりいつの間にか用意されていた替えの着物を着た紫陽は、甘い匂いがする艶のある自分の髪に不思議な気分で触れた。


「ふっふっふ。思った通り、紫陽様ってば綺麗にしたら女のあたしでも見惚れるぐらいお美しいです! 惚れ惚れしちゃう!」


 何とも反応しづらいお世辞に、紫陽はとりあえずうつむくしかない。


「でもでも、主が来る前にもうちょっとだけ着飾りたいところですねぇ」