白銀の妖王は、笑わない少女陰陽師を恋う。



 先ほどから思っていたが、よくしゃべる元気の良い女性だ。紫陽とは対照的である。

 そんな杏に促されるままに、紫陽はとりあえず箸を取った。

 程よい固さで握られていて口に入れるとすっとほどける塩で味をつけただけの握り飯と、出汁の香りが複雑に絡み合った吸い物。どちらも見た目は質素だが、素材そのものが上等なものだというのは何となくわかる。


(美味しい……)


 涼風家では、食事といえば女中たちに混じって残り物を空いた時間にかきこむものだった。あくまで生きるために空腹を満たす行為で、食べ物をこんなに美味しいと思ったのはいつぶりだろうか。

 柔らかめに炊き上げられた米と薄味の汁物は、数日ロクに食べていなかった紫陽でも食べやすい。

 紫陽はそうやって一人感動に打ちひしがれていたのだが、何も声を発しないせいで見ている方は不安になったらしい。


「あの、奥方様……もしかしてお口に合いませんでしたか?」


 杏がそうしょぼんと眉尻を下げて紫陽の顔をのぞきこんできた。紫陽が慌てて首を振ると、ほっとしたように笑顔が戻った。


「良かった! あたしもこういう素朴なご飯大好きなんです」


 出された食事を無事に米粒一つ残さず完食した後、今度は湯殿に案内されることになった。

 そして、その湯殿がまた立派だった。