「違う、悔しいんだよ!俺だって糸ちゃんのことが大好きなんだから。今すぐ俺が幸せにしてあげるって言う勇気が無いせいで糸ちゃんにこんなこと言わせちゃってさ。かっこ悪過ぎ…。男でも女でもなく、″俺″って人間がかっこ悪いだろ…。そのくせにさ、糸ちゃんの話聞いてもっと好きになっちゃったし。恋愛から逃げてるくせに好きとかさぁ…おかしいじゃんか」

「それでもいいよ」

「良くないよ。最低過ぎるでしょ」

「こーちゃんとの関係がなんでもなくなっちゃうほうが嫌だよ。二人の関係性に″利害関係″だって名前を付けられたって構わない。一緒に居ようよ。私は私の方法で、こーちゃんが気負わなくてもいいように楽しくやってくよ。でも心の一番やわい、大切な部分はこーちゃんのものだって言わせてほしい。いつでも還って来られる場所で居てよ」

「…きっと誰にも理解されないよ」

「二人で地獄を生き抜こうよ。いつか″普通″になれる日まで」

「…勝手に約束してもいい?糸ちゃんが居る世界でなら、いつか本当の自分になれるかもしれないって」

「勝手にじゃないよ。二人で、約束」

「うん…ありがとう糸ちゃん」

「あ、そうだ忘れてた!」

鞄から小さい紙袋を取り出して、
紅華に差し出すようにテーブルに置いた。

「え、何?」

「お守り…っていうのは後付けで、本当は退院祝い」

「うわ…貰っていいの?」

「こーちゃんに買ったんだから貰ってくれなきゃ困るよ」