僕の雨になって

「糸ちゃんはなんにする?」

「んーっと…どうしよっかな」

「俺はー…チョコチップモカフラペチーノにしよ」

「じゃあ私もそれにする」

「いいの?」

「うん」

いいも何も、メニューに視線を走らせていても呪文みたいな名前ばっかりでなんにも思い浮かばない。

名前を知らない人は滅多にいないだろう、
お洒落なコーヒーショップに、私は今日初めて入店した。

高校生のお小遣いでドリンク一杯五百円以上は、
私にとってはけっこう厳しい。

宣言通りにあの日から二日後に紅華は退院して、
すぐに連絡をくれた。

いつもは何かとスケジュールが合わなくて先延ばしになっていたのに、それから三日後にはこうやって会うことができた。

いつものバス停で待ち合わせをして適当に歩き始めた。

もうすぐ夏休みが終わる。

九月はもう「夏」とは呼べない季節なのだろうか。

永遠と夏が続きそうなほど太陽は張り切っているのに、
これからどんどん寒くなっていくなんて全然信じられない。

横断歩道の向かいに見つけたコーヒーショップに、紅華の提案で入店した。

注文してカウンターで受け取った「チョコチップモカフラペチーノ」は見るからに甘そうで、
本当は全然甘党じゃない私に、生クリームが喧嘩を売っているように見えた。

紅華とお揃いが良くて同じ物にするって言ったのは私なのに。