僕の雨になって

「こーちゃんがその気になったらでいいから、こーちゃんのこともっと教えてほしい」

「俺のこと?」

「うん。目に見えてることだけじゃなくて、吐き出したくても吐き出せないまま、こーちゃんの中で(うみ)になってしまったことも全部」

「糸ちゃんに聞かれても大丈夫だって勇気が持てたらね」

「うん。ずっと待ってる」

病室のドアが開いて、
看護師さんが入ってきた。

「宇佐見さーん。点滴のお時間ですよ」

「あ、はい」

「あら。お友達?いいわね、今日は退屈しなくって」

看護師さんに笑いながら紅華が頷いて、
私はやっぱりまだ「お友達」の域を超えられないことが寂しくなって、
それを払拭するかのように、丸いスチールチェアから立ち上がった。

「こーちゃん、もうゆっくりしてなきゃだめだよね。そろそろ帰るね」

「糸ちゃん、ごめんね。せっかく来てくれたのに」

「あ、忘れてた」

お見舞いで渡すはずだった、だけど渡しそびれてしまっていたゼリーとフルーツのカップ。

見るからにぬるくなってしまっているそれを、
今更渡すのも躊躇してしまう。

「なぁに、それ」

「お見舞いにと思って買ってきたんだけど…。また今度ちゃんと買ってくるね」

「いいよ。嬉しい。ゼリーだったら食べても平気ですよね?」

「ええ。それくらいなら大丈夫よ」

看護師さんが微笑んで、紅華は本当に嬉しそうに受け取ってくれた。