僕の雨になって

映画やドラマのイメージが強くて、
入院患者は一様に病院が用意する入院着を着せられるのだと思っていた。

目の前の紅華は白いTシャツに二本ラインが入った黒のハーフパンツと、ラフな格好をしている。

会う時にはいつも耳たぶでキラキラと反射しているピアスも、
アクセサリーの類はなんにも着けていなくて、
夏を知らないような白い肌が余計に紅華をシンプルに見せている。

「えーっと…糸ちゃん、なんで?」

「あの…ごめんなさい。やっぱりどうしても心配でお見舞いに…」

「だめだって言ったのに」

「ごめんなさい」

紅華が一つ、息を吐く。
私に気を遣っているみたいに、ゆっくりと小さく。

「…どうしたの。突っ立ったままで」

「ちょっと混乱…っていうか…驚いちゃって」

ちゃんと言わなくても紅華には伝わっている。
私を責めたいような気持ちと諦めが混ざったような目をして、
その目に怯んで俯いた私に、紅華は泣きそうな声で「だからだめだって言ったのに」って繰り返した。

何も言えずにいる私に言っているのかそれともただの独り言なのか分からないくらいの声量で
紅華は「暑いね」って言いながらTシャツの裾をパタパタと扇ぐようにした。

体の線に沿って揺れるTシャツ。
紅華の体に、もう自分の体で見慣れてしまった膨らみを感じて、
握り締めていた手のひらに爪が食い込んで痛かった。