僕の雨になって

「あなた、大丈夫?」

「あ…」

病室の前に突っ立ったまま、
ネームプレートを眺めているだけの女子が居たら心配になるのは当然だと思う。

四十代半ばくらいの女性が、
訝しそうな表情で私を見ている。

「どうしたの?体調悪い?ちょうどここ病院だし…」

「あの…」

「はい」

「病室って男女混合だったり…ってことあったりしません…よね?」

「え?」

「あ、いや…すみません。なんでもないです」

女性は首を傾げながら、
顔には苦笑を浮かべて紅華の病室の向かいに入っていった。

病室のドアは閉め切られていて、
中を覗くことはできない。

ゆっくりと深呼吸をしてスライド式のドアの持ち手に触れたら、
やけに冷んやりしているように感じた。

「糸ちゃん…?」

急に背後からかけられた声に、
ビクッと上半身が跳ねる。

持ち手を握っていた手のひらにまで伝わったのか、
ドアが微かにカタン、と音を立てた。

「こーちゃん…」