僕の雨になって

変なの。

恋人にはしてくれないくせに。

こうやって求めてくるくせに。

心を縛るくせに。

恋人にはしてくれないくせに。

してくれないくせに。

「いつまで入院してるの」

「昼の検査で、あと二、三日くらいで退院していいって」

「会いたい」

「退院したらね?」

「明日会いたい。お見舞い行きたい」

「だーめ」

「なんで?暇なんでしょ?夏休みだし毎日行けるよ」

「だめ。糸ちゃんに会うならちゃんときれいにしてる時がいいし」

「この辺で入院するならあの総合病院でしょ?」

「糸ちゃん。俺だって会いたいけどお見舞いじゃなくてもっと楽しい約束で会おうよ。ね?」

「やだ。会いたい」

わがままって怖い。

制御が効かなくなってしまうことって怖い。

聞き分けがいいフリをして、
「分かった、勝手なことしない」なんて言って、
心の中ではサプライズで会いに行ってしまおうなんて考えている。

紅華だって一人だと不安だろうし、
何より暇な入院生活から少しでも苦痛を減らしてあげたいし。

私は紅華がどんな姿だって絶対に冷めたりしないし。

非常識な自分勝手。

そんな甘い考えが、
紅華が必死で守ってきた壁を無断で壊してしまうことになるなんて、
浅はかな私は気づけていなかったんだ。