少食なのは本当なのに、
嬉しそうに食べ続ける彼に釣られて私もペロリと完食してしまった。
それから私は糸ちゃんって呼ばれるようになって、
私はこーちゃんって呼ぶようになった。
その日の私はまたしても家の鍵を忘れていて、
もしも紅華に誘われることがないまま帰宅していたら
寒い雨空の下に閉め出されていたことになる。
ありがとうって伝えたかったけれど、
傘に穴は空いているは、忘れ物はするはで間抜けだと思われたくなくて、言えないままでいた。
この出逢いは奇跡だと言ってもいい。
それくらいに、素っ頓狂な出逢いはあたたかくて、
あの日を思い出す時の記憶はいつもキラキラとしていて、
紅華は私の大切な人になっていった。
乾いた冬の空気を湿らすような雨のにおいも、
耳馴染みのいい、中性的で落ち着いた紅華の声も、
一生憶えておける保証がこの世にあればいいのに。
嬉しそうに食べ続ける彼に釣られて私もペロリと完食してしまった。
それから私は糸ちゃんって呼ばれるようになって、
私はこーちゃんって呼ぶようになった。
その日の私はまたしても家の鍵を忘れていて、
もしも紅華に誘われることがないまま帰宅していたら
寒い雨空の下に閉め出されていたことになる。
ありがとうって伝えたかったけれど、
傘に穴は空いているは、忘れ物はするはで間抜けだと思われたくなくて、言えないままでいた。
この出逢いは奇跡だと言ってもいい。
それくらいに、素っ頓狂な出逢いはあたたかくて、
あの日を思い出す時の記憶はいつもキラキラとしていて、
紅華は私の大切な人になっていった。
乾いた冬の空気を湿らすような雨のにおいも、
耳馴染みのいい、中性的で落ち着いた紅華の声も、
一生憶えておける保証がこの世にあればいいのに。
