僕の雨になって

「俺ね、幼馴染のことが好きだったんだ。いつからとかもよく憶えてない。気づいたら好きになってた」

「へぇ、凄いね。どんな子なの?」

私に蹴られたことなんて気にも留めていない時雨は
アップルティーの白いカップを両手で包みながら訊いた。

「幼稚園から一緒だったんだけど。女子よりも男子とのほうが気が合う子ってたまにいるだろ。そいつもそういうタイプでさ。女子達がお人形ごっことかおままごととかしてることになんか興味も示さないで俺達と泥団子作ったりボール遊びしたりしてさ。小学校、中学って進学してもどこかずっとボーイッシュで。最初はこんなに気の合う女子なんて滅多に居ないし、こういう関係を壊すのは惜しいなって思うくらいだったのが、だんだんと自分の本心に気づき始めて、ああ、俺はこいつ自身を失くしてしまうことが怖かっただけなんだ、女として好きなんだって認めたらもう…その感情すら悪に思えたよ。あいつはそんなこと全然望んでないんだって分かってたから」

「好きだってその子には言ったの?」

訊いた私に顔を向けて、なぜか琉真は優しい目をして微笑んだ。

「言ったよ。″琉真をそんな風には見れない。琉真だけじゃない。自分はきっと、みんなが思うような恋愛はしない″って。俺が原因なんじゃなくて、そいつ自身に原因があるようなフラれ方だった。なんか俺が分かんないようなことで掘り下げて傷つけたくもないし、俺が原因なんだったらもっと頑張れたのにそれすらもできないのなら、この感情で好きな人を苦しめてしまうのは怖くて、簡単に逃げちゃった。弱いよなぁ」